写真を撮るものにとって富士山は最高の被写体でありもっとも難しい被写体でもある。
多くの写真家が富士山の姿を撮影しに富士五湖周辺や各地からカメラを向けているが、
それは富士山の表面的なごく一面を捉えているに過ぎない。
富士山が包括する大きな姿は、たくさんの命を育む自然の姿そのものともいえる。今回の
写真展では命を育むうえで欠かせない「水」という面から富士山の自然を捉えてみた。
富士山には川がない。そのおかげで崩れやすい岩質ながら山の形を保つことができる。し
かし、山頂に降った水は地下に浸透してなくなってしまうのではなく、地下水として周
辺部に広がり富士五湖や湧水となってあたりを潤す。そして、川のない森ではコケや落
ち葉が地面に水を蓄えて、多くの生き物たちを養っている。それが富士山独特の豊かな
自然を作り出している。そんな自然の流れを直接富士山の姿を見せずに表現してみた。
逆にこれらの豊富な自然の姿を認識することで、富士山という大きな自然に対する認識
をしてもらうことができればと思う。